【完】うしろの席のオオカミさん
大上くんの頭からつま先までを観察するようにじーっと見つめるお姉ちゃんにわたしはあわてて腕を引く。
「そんなんじゃないよ。ほら、もう家入ろ」
これ以上ここで話していたらわたし達の声を聞いて中からお母さんが出てくるかもしれない。
大上くんに視線をやり小さく頭を下げる。
ここから駅までは歩いて5分ぐらい。
お姉ちゃんも毎日駅まで徒歩で行っているんだよね。
「気をつけて帰るんだよー。日向子の彼氏くん」
「だから、違うってば!」
のんきに手なんか振ってないで早く家入るよ!
大上くんは小さく笑っていた。
やっぱあれだね。
黒髪にしたせいか、雰囲気が変わったよね。