【続】隣の家の四兄弟

「ミナトがうるさいのかなー」
「うーん。でも、基本、綾瀬家だけだったらそんなことないと……」
「あ」


私の言葉の途中で、チハルは顔を少し上げてなにか思いついたようだ。


「なんか、高めの声な気もするし……もしかしてアキラ……?」
「え!」


アキラ? あ、でもそうか。休みの日にまた来そうな雰囲気だったもん。
今日休みなんだ。それにしても、結構早くから来たんだな……。

ベランダの方向に顔を向けて、ふと過る。

……聖二……最近土曜仕事多いし、今日もだと思うんだけど……。
アキラは浩一さんやみんなに会いに来てるのかな、それとも……聖二に、会いに来てるのかな……。


悶々とする気持ちは、一度気になりだしてしまうと止まらない。


「行こうか」
「えっ?」


私の気持ちを見透かされた気がしてびっくりしちゃった。

隣が気になる。でも、そこへ行く勇気がない。
それをわかっているかのように、チハルは優しい笑顔でそう言ってくれたから。


「アキラ、ほっとくと暴走しそうだし」


冗談混じりで言うと、チハルはソファを立つ。


「で、でも、チハル、全然寝てないじゃない……」


そうだよ。本当は、私が部屋を出てこなければもうとっくに休んでたのに。


「そういうの、結構慣れてるからヘーキ。それに、もし眠くなったらそのとき寝ればいーんだし」


軽いノリで答えてくれると、私もチハルの誘いに甘えやすい。
それをわかって言ってくれてるのかな……。チハルって、裏があるとかじゃないけど、何を考えてるのかちょっとわかりづらい。


「……無理しないでね?」
「ぼくは自由に生きてるんだよ?無理なんてしないヨ」


オーバーリアクション付きで言われると、つい吹き出してわらっちゃう。


「うん。じゃあ、私準備してくる」
「……うん待ってる」


そうして顔を洗って部屋に戻り、着替えを済ませた。
お腹が空きそうだから、トーストだけを口に入れた。ただ焼いてバターを塗っただけなのに、一緒に食べたチハルは「Buono!」と美味しそうな顔で食べてた。
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