【続】隣の家の四兄弟
そりゃあいつだって笑いあえたりするなら、そんな幸せなことってないだろうけど。
だけど、生きてたら楽しいことばっかじゃないし、もしかしたら傷ついたり苦しいことの方が多いかもしれない。
そんなときに、支えてもらったり、支えてあげたいって思うから。
そういう時間を過ごす中で、一番先に笑顔を見れる位置にいれる恋人(ココ)が、あんたがいいなって思うから……。
「それが『違う』って聖二が言うなら、もー知らないっ!チハルの現場でもイタリアでもどこでも行っちゃうんだから!」
全て言い切った私は、大きく呼吸を繰り返す。
その間も、聖二は何にも言わなくて。
私は勢いで、ベランダからリビングへと戻って来てしまった。
ガラッと後ろ手で乱暴に閉めた窓。
俯いた視界には、自分のつま先。それがじわりと滲んできて、奥歯を噛んで堪えようとする。
『やめるか?』
その一言が重すぎる。
今色々と偉そうなことを勢いで吐き出してきたけど、本当は怖い。
『じゃあ、そうしよう』と決定打を打たれるのが。
……どうしよう。
いつの間にか、ものすごくアイツのことが気になって。
それを世間では〝好き〟というなら。
私、相当アイツのこと、好きになってる。
だけど、もしかして〝好き〟が大きくなっていってるのは私だけかもしれない――……。
両手で顔を覆って、その場にしゃがみこむ。
皮肉なことに、人(聖二)の心の痛みで勝手に流れていた涙も、自分の痛みの今は、素直に流せない。
歪めてる顔を、抑え込むように手のひらを押しつける。
胸が苦しいっていう感覚に捕らわれていたから、全然気付かなかった。
目の前に誰かが来てくれていたことに。