【続】隣の家の四兄弟
「そっちこそ。〝てっきり〟どっか行ったかと思った。二人で」
「はぁ?二人で……って?」
「……チハルと」
どっ、どーいうこと?なんでチハルと二人でどっかに行かなきゃなんないの!
ていうか、どっちかといえば、聖二の方が、アキラに強引にでもどこかへ連れ出されそうな雰囲気だったくせに!
つい正直におもしろくなさそうな顔をしてしまう。
聖二の顔はなんだかまっすぐと見られなくて、聖二の手元ばかり見ていた。
「……やめるか?」
「――――え……」
突然の聖二の言葉に不意に顔を上げる。
ほんの少しだけ苦しげに眉を寄せ、私を見下ろしていた聖二が目を逸らす。
「……もし、お前が俺といても……楽しくない、なら……」
……なに。なに、それ……。
なんでこの男はいきなりそういう発想になるわけ……?
大体、やめるってなに。
どうしてそれすらも、自分で決めた言葉じゃなくて、私が決めるような聞きかたされなきゃなんないのっ。
カッとなった私は、後先考えずに思ったことを口にする。
「……ばっっっ、かじゃないのっ?!なに、それ!楽しいとか楽しくないとか!じゃあ聖二はどうなのよっ」
突然キレた私の質問に、当然ながら返答が聞けることもなく。
荒い息遣いのまま、私だけがひとりで話し続ける。
「聖二が無理ならッ……仕方ないけどッ……でも、少なくとも私はそんなことだけで『やめる』だなんて言えない。っていうか、思わない!」
キッと睨みつけた先にある聖二の顔は、目を大きくして驚いた顔をしてる。
瞬きもせずに、ただ、私を見て。
「……いつも楽しくいられるだけじゃないでしょ?悲しいときとか、つらいときも一緒にいたい人が〝そういう相手〟なんじゃないの……?」