【続】隣の家の四兄弟

ハラハラと視線を泳がせながら三那斗を見てると、急に真面目な顔つきにかわって目を奪われる。
真剣な顔をする三那斗は、なにか惹きつけるものがあると前から思ってた。
その目を向けられると、視線を逸らすことなんかかなわなくなってしまう。


「どーすんの」
「ど、どうって……」
「聖二兄。アキラに告られてる。美佳もチハルに同じようなこと言われてんじゃねーの?」


図星をつかれると、ますます言葉が見つからない。
どうして三那斗は普段鈍感っぽいくせに、こういうところだけ勘が働くんだろう。
動物的なものなのかな。


「オレは認めねー。チハルもアキラも」
「……え?」


チハルも〝アキラも〟……?
それって――。


「聖二のことも心配してるんだ……?」


ぽつりと口にすると、三那斗が頬づえしていた手から顔を上げ、目を丸くする。
そして、みるみるうちに顔を赤くして……。


「ちっ、ちげーし!!べべ別に、オレはそういう意味で言ったわけじゃ……!」
「でも、私だけが決めることじゃないから」


昨日、聖二と話をしたことを思い出して自嘲気味にぼやく。
すると今度は三那斗が私を覗きこむようにする。
すごく、心配そうな顔で。


「まさか……本当に……?」
「……わかんない」
「……こんなことでダメになるなんて、オレは許さないからな」


三那斗の言ったこたが、あまりに予想外で拍子抜けした。
こんなふうに自分で考えるのは自惚れっぽくていやだけど。三那斗は私のことを好きだと言ってくれてたから。
だから、聖二とダメになるかもって聞いて、まさかそんな返答が返ってくるなんて想像もしてなくて。


「それが兄弟(オレたち)以外の人間が原因だなんて、ぜってぇヤだ!」


や、やだって言われても……。


まるでわがまま言う子どものような言い方に、思わず呆気に取られた後に、「ふ」と笑いを零してしまう。

三那斗の思考の基準がわかんないけど、でも、やっぱり兄弟なんだな、なんて感じると、こんなときでも微笑ましく感じた。


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