【続】隣の家の四兄弟
私を含め、他の2人も聖二に注目してる。
全員の視線を受けた聖二は、別にいつもと変わらない、面倒くさい顔をして深く溜め息を吐いた。
そして私を見た。
「めんどくさくなってきた」
は、はぁ……それはもう、今の表情で充分過ぎるほど伝わりますが……。
「行くぞ」
へ?! うそ?!
『どこに』って聞く前にはもう、私の腕を聖二の長い手が伸びて捕まった。
そして、そのままキッチンから連れ去られる。
私の腕を引っ張って、歩き進める聖二の横顔を見た。
すると、ちらっとこっちを見て言った。
「――予定空いてるなら、今からでも同じだろ」
「うぉ! あれ?! 美佳来てたの――って、二人でどこ行くん…」
玄関に向かう途中、偶然三那斗が部屋の扉を開けて話し掛けてくる。
けど、そんな三那斗をパッと見ることしか出来なかった。
聖二に至っては、三那斗を見ることもなく、そのまま私を連れて玄関から出てしまった。
…今頃三那斗、発狂したりし――――
「っんだよ!! そーやって余裕こいてろ!! そのうち――ッ」
――てた。発狂。
まだ1014から遠く離れていない廊下に、三那斗の声が響き渡る。
その声に私は後ろを見つつも、未だに聖二に手を掴まれたまま、歩を進めてた。
エレベーターのボタンを聖二が押すと、少しの間沈黙になる。
振り向かない聖二の後ろ姿を見て、私は今になってドキドキがまた始まった。
無言がとにかく緊張を煽ってる気がするから、私は必死に言葉を探す。
「…あ。ポテサラ…」
作るって言ってたのに、出てきちゃったな。
浩一さん、大変になってないかな。
ふと、そんなことを口にした。
「そんなにポテサラ食いたいか」
「くくっ」と小馬鹿にするように、聖二が前を向いたまま漏らした。
人を食い意地張った女みたいに!
確かに食べることは、大好きだけど!!
「そうじゃなくて!」
つい、声をあげてしまった。
その声に、聖二がくるりと振り向いた。