【続】隣の家の四兄弟
孝四郎くんの質問に、チハルは空を見て考えるような仕草をしながら答える。
「いつまで? んーとりあえず夜ゴハン食べ終わるまではいるけどー」
「違う。美佳の家に」
「え? ミカの家に? mh-それははっきりとわかんないなぁ」
「どうしてホテルでもマンスリーでも借りないのさ!」
ちょ、ちょっとー! 孝四郎くんは本当に可愛い顔して毒を吐くんだから!
それ以上何をいうつもりなのよ!
孝四郎くんは聖二の前にずいっと出て、チハルに近づく。
そして、眉ひとつ動かさずに言い放つ。
「ただでさえ同じ家に敵がいるのに、まさか美佳んとこにまでそういう危ない存在がいるなんて、たまったもんじゃないよ」
て…『敵』って……聖二のこと?
もうお願いだから、余計な波風立てないでー!!
私は孝四郎くんの顔を見て、そう思ったけど、実際はなんにも言えないでいた。
すると、チハルが「くすっ」と笑った。
「a-ha,なるほどー。コウシロウはミカがお気に入り?」
「そういうこと。だからこれ以上余計なライバル増やしたくないんだ」
「『これ以上』? そういえばさっき『同じ家に』って言ってたね。もしかして――」
そこまで言って、チハルはキッチンを見渡した。
でも、私とは目が合わない。
チハルが見てるのは、浩一さんと、聖二。
「……まったく。孝四郎は。正面から行き過ぎだぞ」
浩一さんが苦笑して言うと、「でも牽制しておかないとね」なんてしれっと答える。
――もう! 孝四郎くんてば!
チハルとはこれから長い時間顔を合しそうなのに、余計なネタを教えたら、私が逃げ場なくて困るじゃない!
「大体、そういうのは孝四郎が言うことじゃないだろ」
孝四郎くんをジロッと睨んでいたら、浩一さんが付け足した。
その言葉を聞いて、孝四郎くんから、その後ろに立つ聖二に視線をあてた。
浩一さんが言ってる意味って、もしかして、もしかしなくても――――そういうことだよね…?