【続】隣の家の四兄弟


「ははぁ……そーゆうこと……」


翌日、いまいち意図が読めないまま、早起きのチハルに付き合わされて外に出た。


「Telefono mobile(携帯電話)ぼくも欲しくなったから」
「モバイル……電話が欲しくなったってこと……そう」


そう。チハルの言ってること、わかるんだけど。
だけどね…………?


「Resto?」
「え? なに?」
「えーと……ここ、休みなの?」
「いや、そうじゃなくて……」


私とチハルは、静かな店頭に並んで立っていた。
当たり前だけど、自動ドアも反応しないし、窓から中を見ても誰もいない。


「そうじゃなくて、チハル、早起きしすぎ。まだ開店時間にならないよ」
「え? そうなの? あれ? 今何時?」
「今……8時」


私が携帯の時計を見て答えると、チハルは目を丸くした後、ふにゃっと笑った。


「あーそっか。なんか時差ぼけー。じゃあ、あとどのくらいでここ開くの?」
「んーあと2時間くらい?」
「OK! じゃ、ちょっと時間潰そ」


そう言ってチハルは私の手を簡単に握る。


「ちょ、ちょ、ちょ!」
「ん?」
「手ッ……」
「手? ああ! そっか。ごめん、つい」


『つい』ってなんだー!!

これが三那斗とか孝四郎くんが相手なら、叫んでるとこだけど、ヘラっと笑うチハルには下心とか、まるで感じなかったから心の中だけに留めておいた。

そうして私はチハルの少し後ろをついて歩く。

けど、時間も時間だし、時間を潰すって言ってもどうしていいのかわからない。


そうこうしてるとチハルがお腹を抑えて急に立ち止まった。


「…………」
「え? ど、どうしたの? お腹痛いの?!」
「……お腹すいたぁ」
「オイ!」


それこそ『つい』突っ込んでしまった。

あんたの早起きのせいで、私だって朝ごはん抜いてきたのに!

ほんと、昨日出逢ったばかりなのにかなり振り回されてる。
そう思ってジロリとチハルを睨んだけど、無邪気な顔で見つめ返されると、私の中の毒も抜かれてしまう。


「はぁ……。じゃあどっか開いてるとこあったらなんか食べよ」
「うん!」


大きい犬だな。こりゃ。

そんなことを、今度こそ口に出さずに心の中で思った。


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