【続】隣の家の四兄弟
「じゃーん」
「はいはい。よかったね」
新しい携帯を、チハルは帰り道に何度も私に見せる。
本当に聖二と同じ年なのかと疑ってしまう程、なんだか子供っぽい。
「字、覚えてるかなぁ……漢字はちょっとムリかもー」
「そっか。チハルは何歳まで日本(こっち)に居たんだっけ?」
「チョットだけScuola elementareに行ったかなー」
「スクオラ……なに?」
「あ! ごめん! ぼく気をつけるね。“小学校”だよ」
あ。小学校は少し通ったんだ。
じゃあちょっと読み書きは出来るのかな?
「んー。なんとなく、出来るかも」
ぶつぶつと言いながらチハルは携帯と睨めっこ。
まるで初めて買ってもらったような少年みたいでなんだか微笑ましかった。
「ミカ。僕の登録しておいて」
「え? あー…うん」
そう言われて、私はチハルからスマホを受け取って自分の番号やアドレスを登録する。
ちょっと、“男の人”と番号交換するのに気が引けたけど、少しの間とはいえ一緒に住むからなにかと必要だと思うし……。
それに、綾瀬家の幼馴染みだし、変なことにはなんないよね。
チハルに携帯を返すと、やっぱりにこにこと嬉しそうな顔で「ありがと」と言う。
気付けばすれ違う女の子たちが結構チハルを見て振り返る。
「……ねぇ。チハルって、」
私がチハルに話し掛けた時に、私の携帯が音を上げた。
「あ、メール……」
誰からだろう。
素直にそう思って携帯を確認する。
【きょうはありがとう。ちはる】
……え! “ちはる”?
本文の最後に添えられた名前に、バッと顔をあげた。
「へへー。ミカが第一号!」
するとチハルが、やっぱり少年のような笑顔を私に向けて携帯を見せていた。