製菓男子。
「わたしは占いが、できません。でも、少し先の未来を、見ることができます」


ツバサくんがゆっくり顔を上げ、わたしを一直線に見上げている。
くりっとした目はさくらんぼのように赤く潤んでいる。


「でも、今日は、月曜日は特にやりたくないです。月曜日に見えるのは、必ず、見た人の不幸で。幸せな、当たり障りのない、そんな未来がまったく見えないんです。わたしが見たことで、幸せだった未来まで不幸に変えてしまうんだと思うから。だから、今見たら、ツバサくんの身に起こる、不幸しか見えないんです」


どんな不幸かはわからない。
けれど確実に幸せとは逆の方向にいく未来が、わたしが触れることによって起こってしまう。


わたしは事情を説明する。
離婚、交通死亡事故、自殺、暴行未遂事件、誤認逮捕――――触れた相手全員がそれに該当するわけではないけれど、少なくとも不利益が起こっている。


「おねえさんの話を鵜呑みにすると、ぼくの少し先の未来がわかって、それでぼくが不幸になるってことですよね?」


わたしは頷いて肯定する。


「でも、その少し先の未来でリコが見つかるかもしれない可能性もあるってことですよね? だったらやっぱり、ぼくの未来を見てください」
「わたしの話を、聞いてた?」


(ツバサくんが不幸になって欲しくないんだよ)
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