製菓男子。
ツバサくんは手の甲で涙を拭ってから、正座をし、姿勢を正してわたしを見上げた。
わたしも意志を曲げたくないのだけれど、それはツバサくんも同じようで沈黙が拮抗している。
そこへリビングのドアが開いて、兄が身体を引きずるように出てきた。
ツバサくんが見える位置にくると、身体を壁に預けた。


「どうしてそこまで、チヅルの力を信じるんだ?」
「それは―――ゼンくん、宮崎ゼンさんが今まで嘘をついたことがないからです」
「宮崎か―――宮崎から聞いたのか―――アイツは確かに嘘が大きらいだからな」


「チヅルが月曜日きらいなのと、同じくらいにな」と兄はつけ足した。


「宮崎はお前の力のこと、知ってンの?」
「言っては、いない、けど」


塩谷さんから「俺からなにも言わないから、チヅルちゃんが言いたくなったら話してやって」と言われている。
少なくとも塩谷さんから伝わることはないだろうと思う。
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