製菓男子。
一緒に働いている限り、いつかは話さなきゃいけないこと。
それは重々承知しているつもりだ。
それだけ、接客業に置いてこの不可思議な能力を伏せておくことが難しい。
伏せている限り、塩谷さんへの負担が大きいし、不自然も多くなってくる。


隠しているだけなのに、嘘をついているわけじゃないのに、罪責感が宮崎さんと話すたびに、重石のように肩に乗っかってくる。
けれど言葉にする勇気が、わたしにはまだ湧かなくて、直接本人に伝えられずにいる。


「アイツはミツキ以上に頭キレるしなぁ、まぁ感づいてたンだろうな、他人に対しても言い切れるくらいには。宮崎、あいまいなこと言わないっていうか、言えないヤツだろ、そうじゃなくてもセンテンスが短いヤツだし」


兄は顎を触りながら、思案に耽っている。
そうしながら「理由はなんだ」とツバサくんに聞いている。


「リコ、というのは中学のときの同級生なんです。今も同級生なんですけど」


ツバサくんは鉛のような息を吐き出した。
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