製菓男子。
「―――こんにちは」


カーテンの向こう側からキウイフルーツみたいなさっぱりした声がした。
リコちゃんが現れたのだ。
時計を見ていたツバサくんはにやにや顔を引っ込める。


「あ、ホント、ジャストタイミング。おねえさんが見たのって、ここまで?」
「そう、ですけど」
「じゃあさ、“困らせるつもりじゃなかった”って、おねえさん意味、履き違えているんじゃない? たぶん、その“困ってる”はおねえさんを泣かせて“困っている”の“困ってる”だよね、どう見ても。ね、ゼンくん?」


ツバサくんは一瞬宮崎さんを見やってから、顔を出したリコちゃんに手を振っている。
リコちゃんは健康的な肌の色をしていて、目鼻立ちがくっきりしている背の高い美人さんだ。


「ゼンくんの隣にいる人が、昨日話したおねえさんだよ」


リコちゃんの背は宮崎さんより少し小さいといったくらいなので、わたしは否応なく見上げてしまう。


「わたしの制服、小さいと思ったんですけど、リコちゃん細いから、わたしよりよく似合ってますね」


(某ホラー映画の貞子風だったわたしに褒められても、説得力はなさそうだけど)


リコちゃんはなにを話していいのかわからないといった顔をしていて、視線がツバサくんと宮崎さん間を彷徨っている。
「座ったら」と宮崎さんがリコちゃんにスツールをすすめた。


「学校行けたの?」
「うん。五時間目だけ。教室には、入れなかったんだけど、先生が保健室でいいって」
「そっか」


ツバサくんの声はソーダの泡みたいに弾けて、どこかうれしそう。


「いつかまた、一緒に登校できたらいいね」
「退院したらね」
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