製菓男子。
雨が上がっている。
藤波さんが育てている作物の葉っぱに雫が溜まって、茜色の空間の中に星が光っているようだった。


隣には泣きはらしている藤波さんがいる。
藤波さんを泣かせてしまったのも僕で、このまま帰ると藤波に殴られそうだ。


藤波さんが玄関扉を開けた。
リビングから漏れ聞える声は藤波と荒川のものだ。
どうやら荒川の職場に藤波の同僚からの差し入れがたんまり届いたらしい。
藤波は鬼畜だから、職場の女性たちに自分のではなく荒川の連絡先を教え、窓口に使っている。
気の毒なことに中学の頃かららしい。


荒川は「もう風邪引くな、俺が仕事にならん」と怒り声。
それに対して藤波は「ジャンプはまだか」とまったく気にしていない様子だ。


(こんな状況でどう切り出すかな―――うーん)


当の本人である藤波さんが、上目遣いで僕を見ている。
そうでなくても水分量が多い瞳だから、この表情は犯罪に近い。




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