製菓男子。
「行こうか」


藤波より先にミツキは玄関へ向かった。
それを慌てて僕らふたりが追いかける。


「確か部屋、トイレの前だったよな」


玄関で靴を脱いだミツキの襟を素早く藤波は掴んで、身体を壁に追い詰める。
あまりにも勢いがあったのか、靴箱の上にあったフォトフレームが床に落ちた。


「なに勝手してんだよ」
「救出作戦、でしょ?」


口もとに余裕をたたえるミツキとは対照的に、藤波の顔は今にも人を殺しそうなほどに鬼気迫っている。
ぎりぎりと閉まる襟が、ミツキの首に食い込んでいく。
ミツキが僕を連れてきた理由の見当がついて、間に入ることにする。


「頭に血、のぼりすぎ」


藤波の強固な手に自分の手を重ねる。
するとつき物が落ちたように力が抜けていく。
ミツキの首には線を引いたような赤い痕が残った。


「わるかった」


藤波の軽い謝罪の言葉にミツキは「わかってる」と言って、迷いなく階段を上がっていった。
ふたりの間には、なにかあるのだろう。
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