アラサー女子
そんなとき、トイレから出ると誰かに私の名前が呼ばれた。

『…元山』

大倉さんは、私の名前を呼んで固まった。それそうでしょう。会社の人じゃないが、取引先の人と会ってしまうのだから。

『香山さんも来ていたんですね』

『大倉さんも』

香山さんは、なにか言いたそうだったがその先を言わないでいてくれた。

『私向こうに、人待たせているので、これで』

『はい。また』

そう言って、香山さんは行ってしまった。今度会うのが怖いなと思った。

『偶然トレイで会って』

『そうだったんだ』

それ以上なにも言えなかった。
< 46 / 91 >

この作品をシェア

pagetop