あなたが教えてくれた世界
(……夢?)
ぼんやりとしたまま目を開けると、そこには見慣れた侍女の姿。
さらに見回すと大きな木が目に入り、雨が降るザアザアという音が聞こえる。
そこは森の中で、アルディスは、今が旅の途中だということを思い出した。
どうやら、木にもたれて座っている間に、うとうとと眠り込んでしまったらしい。
「……おはよう、アルディス。今日はよく寝るわね?」
笑いを含んだ表情でオリビアに言われ、そう言えば行きの馬車の中でも寝たんだと思い出す。
「ごめんね、アルディス。雨が予想以上に強く降り始めちゃって、これ以上は馬たちも進めなさそうだから、今日はここで野宿することになったの……。もうすぐ夕飯にするから待ってて」
彼女の言葉に顔をあげると、確かに雨は強くなり、風とともに、嵐ともいうべき規模になっている。
これでは馬も進めないし、出発したとしても、夜が明けるまでに予定の屋敷に到着できるかどうかといったところだろう。
むしろ森の中の方が、木々や葉っぱが激しい風や雨粒を防いでくれて、静かであるように感じる。
現にアルディスも、頭上の鬱蒼とした大きな枝葉のお陰で、一滴の雨粒にも当たっていない。
(森って、素敵なところ……)
そう感じたアルディスは、いまだ申し訳なさそうにたっているオリビアに目を向け、ゆっくり頷いた。
「野宿でも平気?良かったわ。それなら、非常の時のために持ってきた食料だから質素だけど、夜ご飯作ってくるわね」
オリビアはにっこりとしながらそう言い、荷物や食料など積んであるのであろう馬車へと駆けていった。