あなたが教えてくれた世界
考えてみれば、久しぶりにあんな夢を見たのだって、きっと彼のせいだ。
あの目を見たとき、今まで自分がしてきたこと……つまり、自分を周りから切り離し、起きる一切の出来事をありのまま受け入れて何も感じないこと……が、出来なかったから。
そんな事は今まで一度だって無かったのに……自分でも思った以上に戸惑って、思い出してしまったのだ。
アルディスはそっと当時の事を思い出す。
あの日、遠い記憶の中のあの日、アルディスは強く、人形になりたいと願った。
不思議とその日はぐっすり眠れて、夜中に起きる事も無かった。
次の日、起きた彼女が感じたのは、泣き腫らした目の倦怠感と、身体中ものを涙としてを出しきったような解放感。
まるでそれは、全部吐き出して生まれ変わったかのような、自分を苦しめる全てが消え去ったかのような、そんな気分だった。
(……ぬいぐるみさんに、なれたのかな?)
あれだけ強くお願いしたんだから、もしかして神様が聞いてくれたのかもしれない。
……聖帝様かな。わたしは聖帝様のしそんなんだって、先生が言ってたから。
アルディスがそんなことを思ったとき、キィンと耳の奥が痛んだ。
もう慣れきった、痛み。“耳”が昨日する前兆。このあと、沢山の人の沢山の感情が、アルディスの中に流れ込んでくる。
痛み、苦痛、悲しみ、絶望、怒り……。それらが彼女を怯えさせる、苦しめる。
何度も何度も何度も何度も何度も体験して、もういい加減慣れても良いはずなのに、決して慣れることはない。身体中が拒絶する。
(……だいじょうぶ。わたしは、ぬいぐるみさんなんだから)
アルディスは、どこか静かな気分でそう自分に言い聞かせた。