bloody mary

少女は随分長い間泣いていた。

だが、一度も声を漏らすことはなかった。
マリーの胸に頭をもたせかけてはいたものの、身を預けてはこなかった。

どこまでも勝ち気。
あと数年もすれば、かなりイイ女になるだろう。

だけどそれは、あくまで数年後の話。

現在の少女は、バッグから取り出したティッシュでズビズビ鼻をかんでいた。

や、イイケド…
もう少し包み隠せば?


「コレ、返す。」


ビルの壁を背に座り込んだ少女が、隣に立つマリーの腰にナニカを突きつけた。

見れば、ソレは二つに折り畳まれた厚い札束。
マリーが彼女に支払った金だ。


「もう必要ナイし。
私、ナニも売ってないしね。」


マリーはソレを受け取った。
そこから数枚を抜き出して再び少女に手渡し、残りを無造作にポケットに突っ込む。

その間、ずっと無言。

少女は手元に戻った金をジっと見つめた後、渋い顔でマリーを仰いだ。


「いや… ごめん。
誘っといて悪いンだケド、私もう援交する気ないから。」


いやいや… ごめん。
コッチは、ハナっから買う気ねぇから。

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