月灯りに照らされて
ピンポーン♪

「はい、どうぞ」と、一応、カメラで確認してから、ドアを開けた。

「おっ、ちゃんと確認してから開けたね!えらい、えらい。」と、
私の頭を撫でる・・・。

「子供じゃないんだから、当たり前でしょ。」

「うん、うん、解ってるよ。それよりいい匂い!なんか腹減って来たなー」

「あっ、食べる?ご飯の支度が出来てるけど・・・」

「おー、いただきます。それにしても、結構思ったより、良く
 出来たアパートだなー・・」

「うん、お風呂とトイレは別だし、それにガスは都市ガスだし
 お風呂は、追い炊きも出来るから便利だよ。それに、部屋も
 変形だけど、7畳位あるから、意外に使いやすいんだ。」

「もっと狭いのかと思った・・・へぇー、翠らしくていいんじゃない」

「私らしい?・・・」

「うん、余計なものは置いてないし、使いやすいように家具の配置も
 してあるから・・・・とにかく腹減った・・・」

「ご飯に、しよう。そこに座って・・・今持って行くから」

翠は、ご飯の用意をして、テーブルに並べた。

メニューは、肉じゃがに照り焼きチキン、それに具だくさん汁に
春キャベツの浅漬けを出した。

「へぇー、翠って料理、結構するんだね・・・」

「うん、おばあちゃんと住んでいた時に、おばあちゃんから
 教わったの。おばあちゃんは、料理の先生だったから。」

「翠の両親は?」

「うん、昨日、話さなかったけど、私が中学の時に、事故で
 亡くなっているの。だからそこのチェストの上に上がっているの
 一応、仏壇だよ。両親が亡くなってからは、父方の祖父母と一緒に
 住んでいたんだけど、高校1年の時に、祖父が亡くなって、3年生
 の卒業式の後に、祖母が亡くなったの。だから、私は、天涯孤独
 なのよ・・・。」

「そうだったのか・・・・。」

薫は、複雑な顔をしていた・・・・。
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