月灯りに照らされて
そして、予定通り、今年の誕生日は、高級ホテルのレストランで
お祝いをし、その夜は、夜景がきれいに見えるスイートに泊まった。

今年の誕生日プレゼントは、私は、手帳をプレゼントした。
中身は、毎年変えられて、カバーが上品な皮で、素敵な手帳だった。

翠も、自分用に同じ物の色違いを購入した。

薫は、私に、指輪を、それもペアリングをくれた。

薫は、普段、指輪はつけられないので、去年の誕生日プレゼントだった
ペンダントに指輪を通していた。

翠には、「翠は、絶対に、外さないでね!」と、言って、翠の右手の
薬指に嵌めてくれた。

「薫、ありがとう。大切にするね」

その夜は、二人で優しい時間を過ごした。

今年が、二人で過ごす最後の誕生日だ。思い出を沢山、今は記憶
に残すことだけを考えていた。

二人で過ごした誕生日の後、薫のお父さんが、次の選挙に出馬しない
事を、表明した。

日本中が、大騒ぎで。連日、報道番組は、薫の特集を組み
『橘 元の後は、橘 薫、首相の二男で、橘 蓮の弟が出馬』と、
新聞・週刊誌にも報道され、薫の身辺が急に賑やかになった・・・。

もともと、薫の容姿に加え、橘という家柄が後押しし、アイドル並みの
扱いを受けてしまい、そうなると、私も大変で、薫と出かけることはもちろん、マンションの出入りも、いつ人に見られて、報道されるかわからないので
薫に迷惑が掛からないように、安全策を取って、私はアパートに帰った。

それに怒ったのが、薫で、最初の3日程は、我慢していたみたいだが
4日目の朝に、

「なんで、翠がいないんだ!なんで僕の側にいないんだ!」と、電話で
我儘を言い、私が宥めても、聴かなくなっていた。

その夜、秘書の川崎さんから、直接、私に電話がかかって来た。

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