【短】『さよなら』と言えたら、苦しくないのに。
なぁ、なな。


お前の目に俺はどう映ってる?

「優しくて頼りになるお兄ちゃん」か?


本当の俺は、そんなヤツじゃないよ。


もっと汚くて、もっとズルイ男だ。


優しくしたのは、お前の心が俺から離れていかないように。

傍にいたのは、お前がどこか遠くへ行ってしまわないように。


全部、俺自身のためにしてきたことだ。


そんなことにも気が付かないで。

お前は、ずっと俺の手の中に閉じ込められてきた。



だけど、なな。

お前が苦しんできたように、俺も苦しかったよ。


「妹」としてではなく「女」としてお前を見てしまう俺は、おかしんじゃないかって、ずっと思ってた。


なのに、俺のためだけにある笑顔と涙は失えない。

他の誰にも見せたくない。


つまらない嫉妬や束縛で、お前を俺に縛り付ける度に。

俺は、俺のことがどんどん嫌いになっていった。


そして、いつか自分自身を抑えられなくなった時。


お前が思う「お兄ちゃん」でいられなくなるような気がして。

「お兄ちゃん」と呼ばれるこの居場所が消える気がして。


本当はずっと、怯えていたんだ。

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