エリート外科医の甘い独占愛
「――ただいま」
真っ暗な玄関。
手さぐりで照明のスイッチを探し出し、パチンと押した。
傘の先端からは雨水がしたたり落ちて、あっという間に大きな水たまりを作った。
びしょ濡れになったパンプスを脱ぎ捨てて、ペタペタとキッチンのある廊下を進んでいく。
部屋に入るとカーテンレールにかけられている卓志の白衣が目に入った。
クリーニングの薄いビニールに包まれたままのドクターコートは、私が我儘を言って卓志からもらったものだ。
寂しくなったら抱きしめて眠るからと言ったら、困ったように笑っていたっけ。