エリート外科医の甘い独占愛
お昼前のカフェの店内は客もまばらで、いつもなら聞こえてくることのない音が、やけに大きく聞こえてくる。店員の話し声や、食器の触れ合う音、エスプレッソマシーンがシュウシュウと鳴る音、そして何よりも自分の鼓動が一番うるさい。
卓志の奥さんは、案内された席に着くと、メニューを手に取り目を通す。
間もなくして、水の入ったコップを手に注文を取りに来た店員に、私はコーヒー、彼女はハーブティーを注文した。
それから、彼女はカバンから厚みのある封筒を取り出した。
目の前に並べられたのは、今朝、院長室で見たものと同じようなアングルでとられた十数枚の写真だった。
「よく撮れてるでしょ?さすが浮気調査のプロだと思ったわ。私もバカじゃないのよ。卓くんに女がいる事ぐらいだいぶ前から分かっていたの。でも、きちんと調べてよかったと思ってる」
「だからって、あんなふうに、さらし者にするのはあまりにも酷すぎる」
「酷い?そうね。提案された時はやりすぎかしらって思ったけど、こうでもしないと卓くんは目を覚まさない。そう説得されて、そうかもしれないって思ったの」
「おかしいですよ」
「そうかもしれないわね。でも、こうするしかなかった」
その時丁度、注文した飲み物が運ばれてきてそれぞれの前に置かれた。