みだりな逢瀬-それぞれの刹那-


かつて誰よりも、この世の何より大切だと言えるほど愛していた女性がいた。


なぜ過去形か?――それは彼女こと、透子はもうこの世にいないから。


留学中だった俺に突然の別れを切り出し、そして消息がつかめなくなった女性だ。


ロンドンのブティックで内緒で買っていたビロードの小さな箱は、一世一代の勝負に挑む前に何の意味もなさなかった。


< 43 / 117 >

この作品をシェア

pagetop