みだりな逢瀬-それぞれの刹那-


大学時代に知り合った彼女は、いつも寂しさをひた隠しにして笑っていた。


人への気遣いを忘れず、分け隔てのない態度で優しく、でも“自分”を持って凛としていた。


茶髪や金髪が全盛だった時代の中、艶やかで美しい黒髪(ナチュラルヘア)を貫き通したのもその一例だろう。


いつも笑顔で、花が咲いているように明るく、誰とでもすぐに仲良くなれる。それが桔梗谷 透子という人物。


人に媚びない。意見はしても、人の悪口は口にしない。言い換えれば、現代の大和撫子がそこにいた。


ただ、俺は暫くして知ってしまった。ふとした瞬間、透子が苦しそうな顔をしていることを。


それが惚れたきっかけ。LIKEがLOVEに変わるのは実に呆気ないものである。


守ってやりたいなどという上目線の感情よりも先ず、“苦しみを少しでも取り除けたら”と単純に思ったのだ。


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