みだりな逢瀬-それぞれの刹那-
アパレル・ブランドを多数展開する日本でも屈指の総合商社がウチだ。
ネーム・バリューと責任の重さは比例する、と外へ出ればよく分かる。
どうやら早水は入社当時から父に仕えているらしく、父が健在の頃は右腕とまで言われていたそうだ。
現在36歳の彼はいつか経営陣を刷新するとき、何らかのポストに収まるはず。――つまり、会社と私にとっても欠かせない存在である。
シートベルトを外してバッグを手にする。また作り笑い合戦タイムか、と小さく溜め息をつく。
ドアを開けようとしたその時、「但し、」と隣から低い声で話し掛けられる。
「あとで車に乗った時、また幾らでも吐き出せば良い」
「っ、」
無表情でさらり、と人の心をかき回す。それが早水という質の悪い男。
だから、言ってはいけない。その度に逸る鼓動にセーブをかけるのだ。
離れてしまうくらいなら、ほんの少しの優しさを与えられる方が良い。
仕事のパートナーとして以上に、失うのが怖いほど大きな存在になっているから……。
#「6」悪戯な均衡。★終
本編では正体を伏せていた朱祢さんと同名”あかね”の姉、“まりか”さんのSSでした。
どうやら、あかねの性格は里村一族らしさ満点のようです。
彼らの続きは?……以降のUPは皆さんのご反応次第にしたいと思います。汗