みだりな逢瀬-それぞれの刹那-


アパレル・ブランドを多数展開する日本でも屈指の総合商社がウチだ。


ネーム・バリューと責任の重さは比例する、と外へ出ればよく分かる。


どうやら早水は入社当時から父に仕えているらしく、父が健在の頃は右腕とまで言われていたそうだ。


現在36歳の彼はいつか経営陣を刷新するとき、何らかのポストに収まるはず。――つまり、会社と私にとっても欠かせない存在である。


シートベルトを外してバッグを手にする。また作り笑い合戦タイムか、と小さく溜め息をつく。



ドアを開けようとしたその時、「但し、」と隣から低い声で話し掛けられる。



「あとで車に乗った時、また幾らでも吐き出せば良い」

「っ、」

無表情でさらり、と人の心をかき回す。それが早水という質の悪い男。



だから、言ってはいけない。その度に逸る鼓動にセーブをかけるのだ。


離れてしまうくらいなら、ほんの少しの優しさを与えられる方が良い。



仕事のパートナーとして以上に、失うのが怖いほど大きな存在になっているから……。



#「6」悪戯な均衡。★終




本編では正体を伏せていた朱祢さんと同名”あかね”の姉、“まりか”さんのSSでした。

どうやら、あかねの性格は里村一族らしさ満点のようです。

彼らの続きは?……以降のUPは皆さんのご反応次第にしたいと思います。汗


< 66 / 117 >

この作品をシェア

pagetop