みだりな逢瀬-それぞれの刹那-
ただ恥をかきまくったお陰で、社会の本当の厳しさを知らずにいた自分を心から省みることが出来た。
もちろん今でもすべてが学ぶことばかりの毎日だけど、辛くてもとても充実している。
この職が私に合っているのか悩む余裕もないし、落第点ならば貰えそうなへっぽこ経営者だと思う。
それでも、この会社と社員をずっと支えていたい。あの時、強気に出て良かったと感じるくらいには……。
「あー、パーティー嫌い」
こうして脇目も振らず一心に経営と向き合ってきた私。つまり、優雅にエステ中であろう妹とは外見はおろか中身もまるで違う。
ちなみに大学卒業後も妹は、この会社を手伝う気などさらさらなかった。
『くたくたになるまで働くのってそんなに楽しい?』と、いつもくたびれて帰宅する私を見て不憫な顔をしていた。
たくさんの人に囲まれて、華やかに着飾って遊び呆ける時間も、確かに羨ましいとは思うけど。
どっちの人生を選ぶ?ともし聞かれたら、やっぱり今の道を選ぶくらいには仕事人間らしい。
「到着したので小言はあとに」
「……分かりました」
隣から注意が入って黙る。ぶつぶつ家の不満を言わせて貰えるのは、このポルシェの狭い車内だけだ。