奪取―［Berry's版］

　どこからか噂を耳にした者。一度、依頼を受けた人物から勧められた者。なんにせよ、問題を抱え、悩みぬいた人物だけが漸く辿り着けると言う仕組みになっているのだ。

　依頼主の妻の素行調査を始め、彼女の生活パターンを把握することは難しくなかった。夫人はいくつかの習い事をしていた。外出するのは、買い物か、習い事かのどちらかが多い。ご近所の奥様とのお付き合いは人並みにはあるようだが、誰かを自宅へ招き入れている様子は確認できなかった。
　その習い事のひとつが、本日予定されており、15時に終了を迎えるのだ。が、どういうことか。調査担当であるはずの箕浪が、熱を出し倒れたのだ。ほとんどの時間を店の中から出ることのない箕浪が、来客すら珍しいあの店内で、どういった経緯でウイルスを貰い受けたのか。凡人である喜多には、想像も出来ない。