奪取―[Berry's版]
 喜多の父親がデザインする反物に惚れ、着物に携わる道を選んだ絹江が、喜多には理解できなかった。昔と違い、着物産業の将来はどんどん暗いものになってゆくだろうと、喜多には思えて仕方ない。もしかすると、数十年後着物の職人はほとんど存在しなくなっているかもしれないのだ。それほどまでに、日本人の着物離れは激しい。
 職人の手間隙を考えれば妥当と思われるが、既製品でお洒落な洋服が簡単に手に入り、溢れかえる今の時代。着物は高級品だ。手頃な既製品の着物も、最近では出回る様になってはきている。しかし、着物を手に入れても、自分で着れることが出来ない人も多い。祖母や母親が普段着としてきていた頃のように、母から子へと着付けが伝えられる家庭も少ないだろう。更に、着物は窮屈であるという印象が強い。
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