奪取―[Berry's版]
「何を……」
「愛に溺れるのは、馬鹿な男だけれど。愛を手に入れられない男は、最悪よ。何を悟った気になっているのか知らないけれど。女の力を借りないと立っていられないほど、情けない男なの?私の目の前にいる喜多って男は」
「簡単に言うな」
「……自分が惚れた女から、何を学んだのよ。悩むのは、その時になってからで十分でしょう。今を精一杯やってみなさいよ」

 春花の言葉に、喜多は思わず眸を細めた。両手を差し出す春花を、両腕でしっかりと抱きしめる。様々な気持ちを込め、ひとつ頬に唇を落として。

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