奪取―[Berry's版]
 何度も繰り返される、項に寄せられる口付け。本人にその気はないのだろうが。しつこいほどまでに繰り返されるその行為は、絹江の睡眠を妨げるには十分な刺激なのだ。
 違和感を感じ、ゆっくりと瞳を開く。最初に絹江の視界へ飛び込んでくるのは、後ろから伸びる両腕である。自身を柔らかくも、決して緩むことのない力で拘束するそれ。背中から感じるのは、自分以外の存在。僅かな動きで、絹江の覚醒を悟った人物は、耳朶をそっと口に含む。感触を楽しみように、唇で何度か噛んでから、漸く囁くのだ。

「きぬちゃん、おはよう。今日も綺麗だよ」

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