奪取―[Berry's版]
 この件に関し、絹江は喜多から苦情を受けたことがある。しかし、絹江とて理由はわからないのだ。対処のしようもない。それならば、ベッドを共にすることをやめましょうと提案した絹江に、喜多は直ぐに折れた。主人に叱られた日本犬のように、眉も肩も雰囲気すらをも下げ、妥協すると言ったのだ。
 ――きぬちゃんの背中も、俺は好きだよ……と。

 寝巻き代わりにしているワンピースの裾から、喜多の手が忍び込んでくる。明らかに、ある意図を持った掌が絹江の足に柔らかく触れてゆく。膝頭を撫でた後、それ以上上がってくることはなく大人しく降りてゆく掌。だが、腰を押し付けてくる臀部からは、はっきりと存在を顕にしている感触があった。あからさまでもある喜多の態度に、絹江の頬は赤みを帯びる。
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