奪取―[Berry's版]
 耳へ届いた言葉に、絹江は眸を大きくする。絹江と同様に、将治は驚きつつもどこか納得した表情で、小さく言葉を漏らしていた。

「責任者となれば、あの時、簡単に絹江さんを追っては来れないわけだ……どれだけ追い詰められた心境だろうとも」
「まさか、喜多くんが……」
「絹江さん。これは俺の予想だけれど。彼、絹江さんのために、あの地位まで上り詰めたのかもしれないね」
「え?」

 あくまでも俺の予想だよ。と、将治は手元のグラスを煽り、残っている全てを流し込んでいた。

 
< 230 / 253 >

この作品をシェア

pagetop