奪取―[Berry's版]
 ホテル特有の、淡い照明の灯る室内。絹江は閉じていた眸をゆっくりと開いた。長い睫毛が影を作る喜多の瞼が、視界に入る。眉間に皺を寄せ、どこか苦しんでいるような喜多の顔。
 その表情を前に、絹江は数分前の出来事を思い出していた。

 ※※※※※※

 絹江を腕の中へ閉じ込めたままに、喜多は将治へ鋭い視線を向けていた。大事な宝物を周囲の視線から遠ざけるように、自身のジャケットで絹江の身体を包ませて。足元からゆっくりと視線を上げる将治と、喜多のそれが絡む。
 瞬間。将治は口元に笑みを浮かべ表情を和らげた。それは、それは楽しげに。

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