奪取―[Berry's版]
「きぬちゃん。人間には、ふた通りの人間がいると思う。奉仕されることに喜びを感じる人間と、奉仕することに喜びを感じる人間。それは、生活だけの話じゃない、セックスにも言えることだ」
「何の話をしているの?喜多くん」
「話を聞く限り、きぬちゃんは不感症でもセックスに苦痛を感じているわけでもない。ただ、相性が悪かった。それだけだ」

 先ほどまで、遊んでいたはずである帯締めを使い。喜多が絹江の両手首を縛っていた。それは絹江が組んだ帯締めで、左右が淡いグレーとピンクになっている。八つ組みのそれは伸縮があり、絹糸の柔らかさを感じるものの、自由を奪う分には十分に役割を果たしていた。製作者の意図とは反してだ。
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