奪取―[Berry's版]
「きぬちゃん。それは立派な嫉妬だ!本当に、君は可愛い子だね。簡単に俺を喜ばせるんだ。だから、俺はきぬちゃんに夢中になるのは仕方ない」
「夢中なの?喜多くんが、私に?」
「そうだよ。大学時代から、ずっと」

 絹江を強く抱きしめながら、喜多は思いを語る。前触れなく突きつけられた真実に絹江は驚きを隠せない。
 ――偶然ではないお見合い。大学時代からずっと。
 
 絹江はひとつ、長いため息を零す。これは、白旗を上げる以外方法はないのだろうと。正直、流されている感は否めない。だが、ここで必死に抵抗しても、迎える結果が変わるとは思えなかった。
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