奪取―[Berry's版]
 絹江が頷くのを確認してから。喜多は、絹江の作った腕の拘束から頭を引き抜いた。未だに縛られたままの腕を引かれ、絹江と喜多は身体を起こす。ふたりとも、ベッドの上に座っている状態だ。向かい合ったままに、ゆっくりと。喜多が帯締めを解いてゆく。
 さほどきつく縛られていたわけではないものの、行動を制限されていたことに変わりはない。拘束を解かれたことで、絹江は安堵のため息を零す。少しだけ、赤みを帯びている手首を撫で、喜多を見つめた。
 目の前に居る喜多の眸には、欲望の色が見える。他でもない、それが自分に対してなのだと理解すると、絹江は高揚感を自覚していた。恐らく、自分の眸にも。喜多と同じものかは分からないが、色を感じさせる眸があるのだろうと思いながら。

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