奪取―[Berry's版]
「喜多くん」
「なに?」
「……これも、知っていると思うけれど。私、久しぶりなの。優しくしてね」

 喜多は眸を細め、絹江の額に唇を寄せた。続けて、耳元へ唇を移動させ、意図的に吐息を漏らし囁く。

「約束は出来ないけれど、努力はするよ」

 言葉が終わると同時に、耳朶を咥えられた。官能的な刺激に発熱しながらも、投げられた爆弾を前に冷やりと汗も流れる。絹江は、早々に後悔していた。同意をしてしまったことに。

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