奪取―[Berry's版]
 若干の痛みを感じるのだろう。眸を固く閉じる絹江を労わりながら、喜多は最奥を目指す。絹江の内部の動きが、道標となる。先端に触れる感覚で、喜多は目的の場所へ辿り着いたことを自覚する。絹江も、同時に理解したのだろう。ゆっくりと息を吐き出した後、一度、小さく身体が震えていた。粉々に砕けそうな快楽が、ふたりの身体を駆け巡る。
 喜多は大きく動くことはなかった。腰を小さく前後左右に動かしているだけだ。にも関わらず、絹江の内部は喜びで震えていた。いや、それ以上の刺激を求め、早く早くと内部に納まる喜多を囃し立てるために引っ切り無しに蠢いていたのかもしれない。絹江の意思には関係なく、だ。何故なら、ゆるい永遠に続くのではないかと思われる甘い刺激から、先に白旗を上げたのは絹江であった。
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