吸血鬼は淫らな舞台を見る


 どうせ忘れてしまう電話に出る必要があるのか迷ったが、サトウからだった場合を考えて受話器を持ち上げた。


「もしもし?」と応じてから少し高めの男の声で馴れ馴れしく呼びかけてきた。


「よぉ、瑠諏。事件解決おめでとう!褒美に血を渡してやるからKZ工場へすぐに来い」


「事件解決?KZ工場?」


 事件解決とは宮路由貴が起した事件のことだろうか?


 KZ工場は初めて聞く場所だ。


「ああ、そうか。ごめん、ごめん。重度の記憶障害だったな。これからKZ工場の住所を言うからメモするか頭に叩き込んでおけよ」


 電話の相手は瑠諏のことを瑠諏以上に知っている。
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