吸血鬼は淫らな舞台を見る


 その吸血鬼がやって来たのは三宅の電話から32分後。


 肌に張り付くようなピチッとした革のパンツをはき、季節はずれのロングコートを羽織り、頭から爪先までの配色を黒で統一している。


 ただ、肌を露出している顔から首にかけての肌は透けるように白かった。


「ご依頼を受け、アドバイザーとしてお手伝いさせていただきます瑠諏(るす)ビンといいます」

 頭を下げ、意外なほどの低姿勢で吸血鬼は接してきた。


 細身の体、目、鼻、口、眉までも鋭利な刃物のように細く切り揃えられている。


 目の下に黒いシミがあり、寝不足でできたクマなのか、毒々しいメークをわざとしているのか判別できない。
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