ブルーローズの恋人
「直ぐ近くですよ、此処から向こうの――」
今居る場所からスクランブル交差点を斜め向かいに渡り、そこから二筋ほど奥の通りにあると教えられた。
「もしかして、地下鉄で来られました?」
「うん、そうだけど……」
「地下から地上に上がる時、間違えやすいんですよ。向こうにも出口があるんで、そっちからだとこの場所まで10分も掛からないですよ」
どうやら地下鉄から地上に上がる際の出口を間違えていたらしい。
確かに少し分かり辛かったな、と思いながら親切に説明してくれる二人の話を聞く。
「有難う、丁寧に教えてくれて」
長い信号機が、漸く赤から青へと表示が変わり人が流れ始める。
ふわりと柔らかな笑顔でお礼を言うと、二人はほんのり頬を赤く染めて手を振り返してくれた。
交差点の向こう側へと歩き出した真那の背に、彼女達の声が届く。
「すっごい綺麗だったよねー、今の人!」
「うんっ、超イケメン! モデルの人かなぁ?」
『イケメン』の単語に苦笑が漏れる。
スーツ姿を鏡で見て、自分でも男っぽいと思ったくらいだ。
(バイト先でも間違えられるんだろうなぁ……)
1回きりのバイトなら、このまま男で通してしまう方が楽かもしれない。
思案しながら交差点を渡り、教えてもらった通りまで歩いて行くとメモに書いた目印が見えた。
