ブルーローズの恋人
「何て顔してるの、妃那」
「…っ…だ、って……」
くしゃりと眉間に皺を寄せて目許を赤く染めた妃那は、分かり易いほど表情いっぱいに悔しさを浮かべていた。
それでも妃那の可愛らしさは損なわれない。
寧ろ、滑らかな白い肌が薄らと紅潮した様や、薄らと潤んだ瞳は陽の光に煌めいていて美しかった。
「妃那は怒った顔も可愛いね」
ふわりと風に靡く柔らかな妃那の髪に指を通して撫でながら、真那は優しく微笑みかける。
「…っ…私、ホントに怒ってるのに……っ」
「うん。私の為に怒ってくれてるんだよね、有難う」
瞳に溜まった涙が溢れ出しそうになるのを見て、真那はハンカチを取り出すと妃那の手に握らせる。
「悔しい訳じゃ無いけど……仕方ない事だし。それに、私の代わりに妃那が怒ってくれるから、私は大丈夫」
「真那ちゃん……」
「ほら、お昼の時間無くなるから早くご飯済ませよう?」
ぽんぽん、と軽く頭を撫でてあげれば、妃那はコクリと小さく頷いた。