ブルーローズの恋人

「妃那、あそこに座ろうか」

ちょうどいい具合に大樹が日除けとなっているベンチを指し示す。

頷いてベンチに腰を落ち着けた妃那は、食べかけのベーグルサンドを紙袋から取り出して口へ運ぼうとしたが、その動きを止めて中々隣に座ろうとしない真那を不思議そうに見上げた。

「どうしたの?」

「ん、何か飲み物でも買ってこようかと思って」

カフェテラスでサラダは食べ終えていたが、飲みかけのアイスカフェオレは残してきてしまった。
今更取りに戻る気にもなれずに周りを見回せば、少し離れた場所に自動販売機があるのを見付けた。
往復するのにさほど時間は掛からないだろう。

「ちょっと行って来るね」

お昼食べてて、と言い残し小走りで自販機へ向かう。
ある程度距離が離れると次第に歩調は緩やかになり、喉元で引っ掛かっていた溜め息が零れた。

(――また妃那に嫌な思いさせちゃったな……)

自販機の前に立ち、上着のポケットに入れていた小銭入れから硬貨を取り出しながら、先程の妃那の様子を思い浮かべる。

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