せんせい


「ちょーっと待って!」

今度は昌子が歌いだす番だった。

「「プレイバック、プレイバック…!」」

百恵が続き、ふたり同時に決めポーズをとる。


「…百恵ちゃん…わたし、コレなんかどっかで見たことあるような…」

「…プレイバック?」

「と、いうよりデジャヴ。」

「……気のせいよ。で、どれ?」


理由のわからない既視感はさておき、昌子はしばし考えを巡らせた。“胸キュン”とか“スカッとする”はさすがに無いだろう、と。

「なんかどれも違うような気がするけど。あえて選ぶなら…“不思議な気分”かなぁ。」

「それはどうして?」

「だって、Kが自殺しちゃうのも、最後に先生が死んじゃうのも、どうしてか全然わからないもん。」

「…そこを深く読み解くのがこの小説の醍醐味なんだけどね……ま、いいや。起承転結の最初の部分はまず作品を読んでどう感じたか、それは何故なのかを述べることね。そこから発展して、次につなげるのよ。」

「ふんふん。で?」

「次に、“もし、自分だったら”と置き換えてみる。」

「あ、その書き方よく見る!」

「そうね。まぁ中学生に、先生やKの立場に立ってものを考えろっていうのは無理があるけど…自分のステージに持ってきて仮定すればいいのよ。」

「自分のステージ……」

「そ。等身大の、昌子ちゃんでいいの。で、最後のパートで自分の座右の銘とか、有名な人の一言とかを挙げて結論付ける。ほら、骨組みだけ見ると、簡単に書けそうでしょ? ちょっとこのパターンで一度書いてみようか。たたき台としてさ。」

「うん…!なんか、これなら書けそうな気がしてきた!百恵ちゃん、ありがとう!」





< 11 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop