せんせい
「ちょーっと待って!」
今度は昌子が歌いだす番だった。
「「プレイバック、プレイバック…!」」
百恵が続き、ふたり同時に決めポーズをとる。
「…百恵ちゃん…わたし、コレなんかどっかで見たことあるような…」
「…プレイバック?」
「と、いうよりデジャヴ。」
「……気のせいよ。で、どれ?」
理由のわからない既視感はさておき、昌子はしばし考えを巡らせた。“胸キュン”とか“スカッとする”はさすがに無いだろう、と。
「なんかどれも違うような気がするけど。あえて選ぶなら…“不思議な気分”かなぁ。」
「それはどうして?」
「だって、Kが自殺しちゃうのも、最後に先生が死んじゃうのも、どうしてか全然わからないもん。」
「…そこを深く読み解くのがこの小説の醍醐味なんだけどね……ま、いいや。起承転結の最初の部分はまず作品を読んでどう感じたか、それは何故なのかを述べることね。そこから発展して、次につなげるのよ。」
「ふんふん。で?」
「次に、“もし、自分だったら”と置き換えてみる。」
「あ、その書き方よく見る!」
「そうね。まぁ中学生に、先生やKの立場に立ってものを考えろっていうのは無理があるけど…自分のステージに持ってきて仮定すればいいのよ。」
「自分のステージ……」
「そ。等身大の、昌子ちゃんでいいの。で、最後のパートで自分の座右の銘とか、有名な人の一言とかを挙げて結論付ける。ほら、骨組みだけ見ると、簡単に書けそうでしょ? ちょっとこのパターンで一度書いてみようか。たたき台としてさ。」
「うん…!なんか、これなら書けそうな気がしてきた!百恵ちゃん、ありがとう!」