Bloom ─ブルーム─
「あ、でも、きっとその前にまたふられてたわ俺。んで、健との仲もこじれてたかも。だから、ナナのことはもういいよ。

中3の春に終わったんだ。

あ、これ良くない?君と僕は中3の春に終わったのー♪なんつって」

自分が思うより、私の表情は強張っていたのかもしれない。

慌ててフォローするみたいに、大樹先輩は即興で歌いながら、私の様子を窺うように顔を覗きこんできた。

「やっぱ、売れないですよ。全然良くないもん。その歌」

「マジで?」

まだ大樹先輩は高2だし、後、1年半もある。

まだずっと先のことを心配して何になるだろう。

どんなにがんばったって、ナナさんを越えられそうにないし、友達止まりで終わるかもしれない私が、彼のいない町を寂しがったって仕方ない。

“俺が、置いていけなくなるのが、怖かった”

ナナさんを越えられることは、ないだろう。




「あ、そうだ。友里亜と山本先輩が付き合ったの聞きました?」

「うそ!マジで?」

「うん。健さんが聞いたら泣いちゃうかもしれないですね」

「今ごろ号泣してるかも。つーか俺も泣きそう」

「ぷぷぷ。友里亜モテモテ」

「そっかぁ。勇もなかなかやるなぁ」

「山本先輩は、友里亜を置いていけるのかな」

「さぁ」

まだ夏だし。

もう一度やってくる夏も、先輩はまだここで笑ってるはずだから。

風を大きく吸い込むと、1時間目の終わりのチャイムが鳴った。

「じゃあ、腹痛が治ったので、次の授業出ますね」

「仮病はいけませんっ」

「遅刻もいけませんっ」
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