Bloom ─ブルーム─
「大樹先輩はすごいですね」

「ん?何が?」

こんな風に簡単に女の子の気持ち持ち上げて、平然としてられるんだもん。すごいよ。

そんな事、言えないけど。

「ステージ上がったらもう歌手だもんね。歌うの緊張とかしないんですか?ステージに上がるの恐くないの?」

「俺?めっちゃ緊張するよ?ヤバイくらい」

「うそ?」

「ホントホント。歌い出したらスゲー気持ちいいんだけど、ステージ上がるまではマジで緊張する」

そうなんだ。

あんなに堂々としてる感じだったのに。

「じゃあ、ライブ怖い?」

「うん、実はね。全員が俺らのを聴きに来てるわけじゃないし、他のバンドのファンとかはなんだコイツらみたいな冷めた目で見たりするからさ。

俺らを見に来てくれてる奴らには、いい歌聴かせなきゃっていうプレッシャーもあるし。正直、怖いよ。

けど、そんなんでつまづいてたら、ビッグになれないでしょお」

真剣に語っていた先輩は、また最後にふっと力を抜いて笑う。

「そうなんだ。私、大樹先輩は緊張とかしないのかと思ってた」

「ふっ。俺をナメんなよ」

いやそれは緊張しない人のセリフだろ。

「じゃあ、緊張取るおまじないしてあげる」

「ん?」

私は前から渡せずにいた手作りのミサンガをポケットから取り出すと、大樹先輩の左手首に結んだ。
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