Bloom ─ブルーム─
そして、健さんは、真っ赤になる私を見てニヤッとしながら、タオルで絵の具のついた顔をごしごし拭いた。

健さんの部屋にあるパイプベッドに私を座らせると、大樹先輩は

「大丈夫?」

少し反省したのか、真顔で私の顔を覗き込んでくる。

さっき歌ってたせいか、彼の胸元からほんのり汗の匂いがした。

「ごめん。調子に乗りすぎた」

けど、そう言いながら、また、プククッと吹き出す。

「反省してないですよね?」

「いや、してます!はい!すいませんっ」

「 笑ってますよね?」

なんだ、本当に楽しそうに笑えてる。

お腹の底から込み上げてる風な大樹先輩の笑い。

悔しいけど、気持ちが落ち着くと、そんな風に笑えてる大樹先輩にホッとしてしまっていた。

「あ、明宏、電話終わったっぽいよ」

窓から外を見ていた健さんが言った。

そう言えば、誰かと喧嘩中っぽかったけど。

仲直りしたのかな?

「明宏ね、女と大喧嘩してたんだよ?別れる方に千円!」

そう言って楽しそうに片手を上げる健さん。

「まだまだ。別れない方に千円!」

大樹先輩も手を上げる。

そして2人揃って私を見つめた。

え?私?

「じ、じゃあ別れない方に千円……」

って!

つい乗せられて言っちゃったけど、何なのこの人達?

何でも賭けにしちゃうんだから!

「ち、ちょっと待って下さい!何があったのかわかんないのに賭けられないですよ」

< 156 / 315 >

この作品をシェア

pagetop