Bloom ─ブルーム─
「健が、後夜祭より前にどこかで里花ちゃんを見たような気がするって言い出したからさ」

「そーそー。もっと前にどっかで会ったような気がして、大樹に聞いたら、『じゃあ思い出させてやるよ』って、メイクされてさー」

大樹先輩のせいだみたいな言い方してるけど、明らかに楽しんだ様子の健さん。

きっと、健さんの事だから、ノリノリで了承したはず。

「やっと思い出せたよ。そうだ、あのときのへっぴり腰の女の子だ。いやー良かった良かった。思い出せて本当良かった」

そう言っては、また私の驚き方を思い出して笑い出す。

「大樹先輩」

「ん?」

「わざわざ再現しなくても、口で話せばわかることですよね?」

「ん?まぁ、そう?かな?」

そう言いながらも、大樹先輩まで思い出し笑いが止まらない様子。

さっきまで、歌声聴きながら浸ってた自分、なし!

大樹先輩の笑顔は涙なんて解釈も却下!

「もーっ!本当にびっくりしたんだからっ!」

廊下で座り込んだままジタバタ。

そしたらそんな私を、大樹先輩は「完全再現」なんて言って、抱き上げた。

お姫様抱っこ。

「あー、そうだそうだ、お前焦って抱えて走ったよな」

「な?思い出しただろ?」

「おぉ、やっぱ再現が一番わかりやすいわ」
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